森の達人・神垣健司 “森へ入ろう”

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VOL.9
 
吊り橋を渡るスリルが味わえる白糸の滝

白糸の滝は広石内の灰ヶ峰山麓側、海抜130mに位置し、高さ約38m、幅6mもある芸南地方有数の滝である。滝壺には小石が敷き詰められ、真夏に滝壺の周囲に立つと水の冷気が天然のクーラーになるため、かつては涼を求めて多くの人々が訪れていた。一方、冬場は木々も寒々として、周囲はひっそりと静まり返り、滝から流れ落ちる水の音だけが響いている。このシーズンに白糸の滝を訪れる人々は少なく、たいてい自分一人で滝見物を満喫することができる。冬場の隠れた穴場として、小滝橋を渡って白糸の滝を散策するコースを推薦したい。

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小滝橋は全長100m余りの本格的な吊り橋である。橋梁は少し色あせたオレンジ色で、足下には木板がはめ込まれている。歩くと「キイキイ」と音がして揺れ始めるので、高所恐怖症の人が渡るのは少し勇気がいるかもしれない。
急な坂道を上っていくと、道が二手に分かれる。左手の道を進むとすぐ、目の前に雄大な白糸の滝が見えてくる。冬場は比較的水量が少ないものの、断崖絶壁から流れ落ちる水の勢いを見ていると、その迫力に圧倒されてしまう。
白糸の滝を形作っている岩石は、火山が噴火した時の溶岩が固まってできたもので、正式には溶結凝灰岩という。この岩石の中には、ガラス質の物質が平行に並んでいる。これは、軽石が岩石の重さで押しつぶされてできたもので、地層のような形をしている。こうした岩石はとても珍しく、呉市の文化財に指定されている。また、白糸の滝そのものも、呉市の指定文化財である。
白糸の滝周辺は、見上げるほどのカシやシイの巨木が生い茂り、幼虫がこれらの樹の葉を食べるムラサキシジミやムラサキツバメなどのチョウによっては楽園となっている。これらのチョウの仲間は、東南アジアを中心に200種余りが分布しているが、呉周辺ではこの2種類しか生息していない。ともに成虫で冬を越すため、天気が良い日には冬でも姿を現す。
なお、白糸の滝の手前には、灰ヶ峰(江ノ藤山)に通じる山道がある。山道の途中は荒れているかもしれないが、健脚の人なら一日かけて走破することも可能である。

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ムラサキツバメの幼虫はシリブカガシの葉を食べる

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海産のムツと区別するためカワムツと名付けられた

 

詳細は、月刊くれえばん2001年2月号掲載

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小滝橋は芸南地方では珍しい吊り橋である

mori_vol9_4.jpg白糸の滝とそれを形作る貴重な岩石

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ムラサキシジミは東南アジアが古里


   
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