森の達人・神垣健司 “森へ入ろう”

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VOL.6
 
芸南地方の自然歩道めぐり
「野呂川上流で本格的な森林浴を満喫する」

「森林浴を求めて中国山地などを訪れる人が多い。しかし、夏は緑一色に染まった中国山地の山々も、冬になると樹木が落葉 して寒々しくなり、ちょっと森林浴の気分にはならない。その点、呉周辺の渓流沿いは冬でも葉が付いている常緑広葉樹が多く、天気が良い日には気持ちのいい 里山歩きができる。緑が美しい森にいると、何かいい香りがしてくる。これが森林の香りといわれるフィトンチッドである。フィトンチッドは樹木が作り出して 発散する有機化合物で、身体に浴びるとリフレッシュ効果や抗菌・防虫・消臭効果のあることが分かっている。野呂山北斜面には野呂山頂と安浦町を結ぶ野路山 林道があり、側には野呂川が流れている。野呂川上流沿いには、アラカシやシリブカガシ、スタジイといった常緑広葉樹が目立つ。快晴の日には、野呂川上流で 贅沢な森林浴を楽しみ、身体いっぱいにフィトンチッドを浴びてみよう」

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美しい渓流に出会う
野呂川上流へは、車が便利である。まず、黒瀬町と安浦町を結ぶ県道34号線から野呂川ダムの標識に従って進み、三叉路を野呂山山頂に向かって行く。ここか らが野路山林道となる。舗装道路ではあるが、道幅が狭いので、十分注意しよう。数軒の民家を抜けると、いきなり左手に美しい渓流が見えてくる。この辺りは 野呂川の上流部に当たり、小さな滝壺になったような所では、夏になると水浴びを楽しんでいる人を見かける。  野路山林道の途中には車を駐車するスペースが多いので、車を駐車してのんびりと森林浴を楽しみたい。渓流に入ってみるといつも水量が安定しており、野呂 山の保水力に感心させられる。所々でダムでせき止められ、砂が堆積して渓流とは異なった景観になっている場所もあり、興味が尽きない。  野路山林道をそのままずっと登っていくと、途中から野呂川とは離れて尾根筋の道となり、ついには野呂山十文字ロータリーに至る。

ムカシトンボが飛ぶ渓流
野呂川上流でムカシトンボを見つけた。ムカシトンボは太古の化石トンボとほぼ同じ形で、日本とヒマラヤにしかいない貴重な古代トンボである。渓流の上をす ごい速さで飛び、なかなか止まることがない。ムカシトンボの幼虫(ヤゴ)は8年かかって成虫になることから、長い間安定してきれいな水が流れる渓流にしか 棲んでいない。ムカシトンボが棲んでいるということは、この辺りの自然が安定して保たれている証拠でもある。さらに野路山林道をずっと登っていくと、川幅 が狭くなるにつれて、林道は次第に川から離れてくる。そして、この辺りの渓流が、ムカシトンボが産卵する場所でもある。コケやフキの茎に産み込まれた卵は ヤゴになり、成長しながら野呂川を少しずつ下り、8年目の春に野呂山林道近くの清流で成虫になる。  ムカシトンボのヤゴは、渓流の中にある岩にしがみついている。渓流の岩をひっくり返すと、ムカシトンボ以外にもトビケラやサワガニといった多くの生き物 を見つけることができる。時には、ウグイの稚魚もうずくまっている。森林浴の途中に、ちょっとした水遊びをするのも楽しい。
〈2000年12月号掲載〉

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晩秋の柔らかい日が差し込む野呂川上流

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メジロは古くから多くの人に愛されてきた

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ミヤマガマズミの実は赤く美しい

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恐竜時代から生き続けるムカシトンボ


   
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