森の達人・神垣健司 “森へ入ろう”

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VOL.4
 
「休山で海を渡る生き物たちと出会う」

休山は呉市の南部に位置する標高500.9mの独立峰で、市街地を東西に分断し三方が海に面している。休山は海に面して いることから、海上を移動する生き物たちの中継場所や通過場所になっているため、これらを観察する場所としても一級の地である。秋風が吹く頃になると、寒 さを避けるために南の方へ移動したり、今までの繁殖場所を離れて別の生息地に移動する生き物たちが増えてくる。さわやかな秋の1日、海を渡る生き物たちと 出会う散策をしよう。

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草地に飛び交うウスバキトンボ
高烏台から休山山頂に続く舗装道は、右手に瀬戸内海が見渡せる気持ちのいい登りが続く。途中にはアセビの実がたくさん見られる場所もある。舗装道沿いの 草地には、薄いオレンジ色のトンボが飛び交っている。このトンボはウスバキトンボといって、世界中を放浪するトンボとして有名である。寒さに弱く、冬にな ると幼虫であるヤゴが死滅し、春になると再び南の島から移動を始める。移動の途中で繁殖しながら、どんどん数を増やしていく。ちょうどお盆の頃から急に数 が増えるので「盆トンボ」と呼ばれて、先祖の霊を運んでくるという言い伝えがあるため、古くから大切にされてきたトンボである。体に比べて翅が大きく、長 距離を飛翔するのに適している。海上を運行する船舶からは、移動中のウスバキトンボの大群を目撃したという報告も多い。

山頂でハチクマの渡りを観察
休山山頂は四方が見渡せ、生き物の渡りを観察するのにも適している。山頂の草原付近にあるクズのまわりには、小さなチョウが飛び回っている。ウラナミシ ジミだ。ウラナミシジミは冬に霜が降りない暖地でしか冬を越せない。芸南地方では冬を越せないため、冬になるとすべて死んでしまう。そして翌年、南西諸島 などの温暖な地から、梅雨の頃に吹く南風に乗って再び現れ、秋にかけて数を増やしていく。
渡りをする生き物のうち、美しく雄大なのは大型猛禽類の一種、ハチクマである。ハチクマは蜂の幼虫を好んで食べる習性があることから、この名前が付けら れた。夏鳥として日本列島で繁殖し、秋になるとフィリピンの方へ移動していく。休山では賀茂台地の方面から現れ、そのまま瀬戸内海を渡る姿が観察できる。 その後、太平洋を南に下るのである。
また休山山頂から少し阿賀方面に下ると、ヒヨドリバナの花に集まるアサギマダラを簡単に見ることができる。
渡りの生き物が姿を消す頃になると、冬の便りが聞こえるようになる。
〈1999年10月号掲載〉

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休山山頂から瀬戸内海を眺める

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世界中を放浪するウスバキトンボ

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大空を雄大に滑空するハチクマ
(飯田和彦氏撮影)

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毎年、蕃殖しながら北上するウラナミシジミ

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ヒヨドリバナ吸蜜中のアサギマダラ


   
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