森の達人・神垣健司 “森へ入ろう”

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VOL.2
 
芸南の自然歩めぐり
真夏の夜下蒲刈島で、蛍の舞いを楽しもう

子どもの頃、夏休みに田んぼでたくさんの蛍を見た記憶がある。その当時は蛍の種類など考えもしなかったが、今思うと、あ の時の蛍はすべてヘイケボタルだったと思う。有名なゲンジボタルは6月の限られた時期にしか姿を見せないが、少し小型のヘイケボタルは初夏から夏休みの終 わり頃まで、長い間姿を見ることができる。

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呉にはヘイケボタルを観察する絶好の場所がある。そこは下蒲刈島・住吉谷にある大池だ。下蒲刈島は目立った河川はなく、 溜め池や湿地などの水環境にも乏しい。そうした中で住吉谷にある大池は貴重な溜め池であり、近年「ほたるの谷」として整備されている。ここは芸南地方屈指 のヘイケボタル豊産地で、うまく発生期と合うと、池の縁を群れ飛ぶ多数のヘイケボタルを鑑賞することができる。
大池までは車で簡単に行けるが、せっかくの機会なので海辺を歩きながら大池に出かけてみよう。蘭島閣美術館などの施設から南に向かって県道を歩く。左手に は穏やかな瀬戸の海があり、空気の澄んだ日には四国山脈がすぐ近くに見える。約10分ほど歩くと、右手に山に向かう道路があるので、ここを右折する。しば らくは両側にミカン畑などがあり、道路は次第に登りになる。しばらく歩くと、右手の谷間にダムにせき止められた溜め池が見えてくる。溜め池は3つあり、上 部の溜め池が通称『大池』と呼ばれている。

すぐに池のそばまで行かずに、道路の上から池を注意深く眺めてみよう。下蒲刈島ではなかなか目にする機会のないカワセ ミが、池の縁などに止まっているかもしれない。カワセミは日本全国の川や海岸に棲み、「空飛ぶ宝石」とも呼ばれる大変美しい鳥である。背は青、翼は緑、腹 はオレンジ色とカラフルな色合いで、一度見ると忘れられない。カワセミは大池に棲む小型の魚を狙っている。運がいいと、カワセミが池に飛び込んで魚を狩る シーンを見ることができる。
池の縁を歩いてみると、多数のトンボに出会うことができる。下蒲刈島に生息するほとんどのトンボを、この大池で見ることができる。夏にはモノサシトン ボ、キイトトンボ、クロイトトンボなどのイトトンボの仲間や、シオカラトンボ、オオシオカラトンボ、ギンヤンマが多い。特に初めてトンボを観察する人に とっては、キイトトンボの美しさは特筆ものであろう。キイトトンボは平地などに水生植物の多い池や沼、湿地などに棲息するイトトンボで、春の終わりから秋 にかけて、長い間姿を見ることができる。身体はレモンイエローの鮮やかな色で、緑の草むらを飛んでいてもすぐに見つけられる。大池の縁では特に数が多く、 簡単に見つけることができる。大池に行った折りには、ぜひ探してみるといい。
日が沈みはじめ、辺りがやや薄暗くなる頃、大池の縁にある草むらの中から小さな光が見え始める。ゲンジボタルのような大きな光ではなく、またゲンジボタ ルより短い間隔で発光している。この蛍がヘイケボタルで、しばらくするといたるところでチカチカ光っているのがわかる。ゲンジボタルが河川などの水が流れ る環境に棲息するのに対し、ヘイケボタルは田んぼなど水の流れがない場所に棲息する。そのため大池のように水の流れがない溜め池にすんでいるのだ。ヘイケ ボタルはお盆の頃まで姿を見ることができるので、長期にわたって蛍の鑑賞を楽しむことができる。
ある時、大池のそばに車を停めてウインカーを点滅させてみたことがある。するとウインカーの点滅に合わせて、多数のヘイケボタルが一斉に点滅をはじめ、 その光景は本当に幻想的だった。真夏の夜、ヘイケボタルの幻想的な光を眺めていると、ひと時の間でも暑さを忘れることができる。

〈続きは2005年8月号へ〉

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大池

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空を飛ぶ宝石と言われるカワセミ

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ヘイケボタル


   
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