森の達人・神垣健司 “森へ入ろう”![]()
| 里山に点在するため池は、農業用水として利用されるために、定期的な草刈りなどが行われています。こうして管理されているため池周辺では、ススキやクズなどがはびこらないため、四季を通して多くの花々を鑑賞することができます。とりわけ賀茂台地は、日本有数のため池を擁しているので、貴重な湿地・ため池に生息する植物やトンボなどの観察に適した地域です。今回は、国道沿いにあって、観察も容易にできる黒瀬町国近のため池を紹介します。 国近の国道375号線沿いにあるローソンの東側に水田があり、その奥に小さな4つのため池が連なっています。10月下旬、最も国道よりのため池を訪ねてみましょう。もちろんため池の中は急な深まりがあるので、決して池の中には足を踏み入れないよう、慎重な行動が必要になります。 ため池の西側にある堰堤では、すぐに星形をした白い花が見つかるはずです。花の中心には小さな白いヒゲがたくさん生えています。この花が絶滅が心配されているイヌセンブリです。広島県にはセンブリの仲間が3種自生しています。広い地域に自生しているのが苦いことで有名なセンブリ、中国山地の高原などで見られるムラサキセンブリ、そして里山を中心に分布するイヌセンブリです。センブリ類の中では、開発が進んでいる里山に自生するイヌセンブリが、最も絶滅が心配されています。 イヌセンブリは本州、四国、九州の主に湿地に自生する一年草で、広島県以外でも数が減っていて絶滅が心配されている野草です。胃薬になる苦いセンブリに比べて、苦みや薬効がないことから、イヌセンブリと呼ばれているようです。 花に白く長い毛がたくさん生えているのが特徴で、確かに口に含んでみてもほとんど苦みがありません。 ため池の周りには、イヌセンブリ以外にもたくさんの秋の花が咲いています。ピンク色の美しい花を、花火のように咲かせているのはヤマラッキョウです。かつてヤマラッキョウは秋の中国山地を彩る花と思っていましたが、賀茂台地のため池周辺でも多く自生していることを知って驚いたことがあります。ラッキョウの花に似たことからヤマラッキョウと名付けられ、炒め物にしたり天ぷらにして食べることができるそうです。ただし、ヤマラッキョウは食べられないという人もいますので、実際のところ食べない方が無難かもしれません。 秋といえば、赤トンボのシーズンです。ため池周辺では、多くの赤トンボたちが飛び交っています。多くの赤トンボの中で、最も美しいのはキトンボです。赤トンボなのにキトンボとは変な感じがしますね。実は赤トンボの仲間には、赤ではなく黄や青、黒などに色づいた種類もいます。キトンボは赤トンボの仲間では最も遅くまで活動するトンボで、ときには年を越しても生き残っていることさえあります。濃い黄色(オレンジ色)に染まったキトンボは、雌を待つために見晴らしの良い場所になわばりをつくります。水面から出ている植物の茎などの上にとまり、ときおり飛び立っては周囲をパトロールします。飛んでいるときのキトンボの羽は黄金色に輝き、初めて見たときはその美しさにドキドキしました。今回紹介した国近のため池は、秋になれば必ずキトンボが見られる場所です。キトンボを見たい方は、ぜひデジカメを持って出かけてみてください。 ため池のそばにある雑木林では、たくさんのドングリが落ちています。拾ってみると、大きなドングリと小さなドングリがあるのに気づくでしょう。大きなドングリはアベマキ(クヌギの近縁種)、小さなドングリはコナラです。どちらも樹液にカブトムシやクワガタムシが集まる樹でもあります。せっかくなので、少し持って帰って庭に植えてみましょう。春になって小さな芽が出ると、その愛らしさに感激することでしょう。ただドングリを植えるときは、横向きにして植えてくださいね。尖ったところを上にして植えると、芽が出ません。 ウェブ上の文章及び写真を無断で使用することは固く禁じます
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![]() 可憐に咲くイヌセンブリの花は晩秋のため池を彩ります。
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